「有給って、保育士でもちゃんと取れるの?」「申請したら嫌な顔をされそうで…」そんな不安を持つ保育士の声は、少なくありません。
結論から言うと、保育士も法律で定められた有給休暇を取る権利があります。正社員だけでなく、パートや非常勤の方も対象です。ただ、現場の実態として「取りにくい」と感じている人が多いのも事実です。
この記事では、有給休暇の基本的な仕組みから、実際の取得率、取りやすい園の見分け方、退職時の消化方法まで、知っておきたい情報をまとめました。
- 有給休暇の日数・条件と、パートでも取れる理由について
- 保育士が有給を取りにくい原因と、スムーズに取るコツについて
- 退職時に有給を全部使い切る方法と、有給が取りやすい園の見分け方について
1. 保育士の有給休暇の日数と条件|パートも対象になる?

有給休暇は「正社員だけのもの」と思われがちですが、パートや非常勤の方にも法律上の権利があります。
まずは付与の条件と日数の基本を押さえておきましょう。
有給休暇がもらえる条件
有給休暇は、労働基準法第39条で定められた、すべての労働者に認められた権利です。以下の2つの条件を満たすと、取得する権利が生まれます。
この条件を満たした時点で、有給休暇は自動的に付与されます。
「うちの園は有給がない」という話を耳にすることがありますが、法律上それはあり得ません。付与されていない場合は、労働基準法違反にあたります。
勤続年数ごとの付与日数
有給休暇の付与日数は、勤続年数に応じて増えていきます。

有給休暇 付与日数(正社員・フルタイム)
| 勤続年数 | 付与日数 |
|---|---|
| 6ヶ月 | 10日 |
| 1年6ヶ月 | 11日 |
| 2年6ヶ月 | 12日 |
| 3年6ヶ月 | 14日 |
| 4年6ヶ月 | 16日 |
| 5年6ヶ月 | 18日 |
| 6年6ヶ月以上 | 20日(上限) |
出典:労働基準法第39条
付与された有給休暇は2年間有効です。使わないまま2年が経過すると消滅してしまうため、計画的に使うことが大切です。
パートや非常勤でも有給休暇は取れる
「パートだから有給はない」と思われがちですが、それは誤りです。
週の所定労働日数が少なくても、条件を満たせば有給休暇は付与されます。これを「比例付与」といいます。

「パートだから有給はない」と言われた場合、それは法律上の誤りです。正しい知識を持つことで、自分の権利をしっかり守ることができます。
【出典】厚生労働省「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」
2. 保育士の有給休暇は年5日取得が義務|園側が果たすべき責任とは

法改正によって、有給休暇の取得は「労働者が申請するもの」から「園側が取得させなければならないもの」に変わりました。
この点を正しく理解しておくことが大切です。
働き方改革関連法の施行により、年間10日以上の有給休暇が付与されるすべての労働者に対して、使用者(園側)が年5日以上の有給休暇を取得させることが義務付けられました。
もし園がこの義務を果たさなかった場合、労働基準法違反として使用者に30万円以下の罰金が科される可能性があります。「忙しいから」「人手が足りないから」という理由で5日以上の取得が認められないのは、法律上許されません。
なお、この義務は正社員だけでなく、年間10日以上付与されるパート・非常勤の方にも適用されます。
【出典】厚生労働省東京労働局「年5日の年次有給休暇の確実な取得」
3. 保育士の有給取得率の実態|データで見るリアルな現場

「取れている」という数字の裏に、保育現場ならではの厳しい実情があります。
公的データをもとに現場の実態を見ていきます。
全産業の平均取得率と保育士の状況
厚生労働省の「就労条件総合調査」によると、全産業の年次有給休暇取得率は58.3%、平均取得日数は10.9日(令和4年調査)となっています。
保育士を含む社会福祉施設の取得状況はこれを下回る傾向があり、特に小規模な施設では年間3〜6日程度にとどまるケースも見られます。
取っていても「体調不良のとき」が大半
有給休暇を取得したことがある保育士は8割以上いる一方、その目的として最も多いのが「体調不良」です。
つまり、「休みたいから休む」ではなく「体が動かないから仕方なく休む」という使われ方が大半で、自由な気持ちで使えているケースはまだ少数派と言えます。
また、保育士を対象とした調査では、58%が「有給を取りにくい」と回答しており、4割が「完全消化は難しい」と感じているという結果も出ています(※1)。
施設の種類によっても差がある
有給の取りやすさは、施設の種類によって差があります。
大手法人が運営する認可保育園では、代替要員の確保やシフト管理が整備されていることが多く、比較的取得しやすい傾向があります。
一方、人員が最低限しかいない小規模施設では、1人休むだけで現場への影響が大きく、取りにくい状況になりがちです。
4. 保育士が有給を取りにくい理由|現場の3つの構造的問題

有給休暇が取りにくいのは、個人の問題ではありません。
保育現場の構造的な問題が背景にあります。「自分だけが悪いわけではない」と知っておくことが、まず大切です。
慢性的な人手不足
保育業界全体で人員が不足しており、1人が休むと他のスタッフへの負担が大きくなる構造があります。
「休んだらみんなに迷惑をかけてしまう」という気持ちが、申請のブレーキになりやすいのです。有休を申請しにくい理由に、「人手不足」を挙げる保育士の声は多く聞かれます。
行事や繁忙期が多い
運動会、発表会、入退園の時期など、保育園には有給を申請しにくいタイミングが年間を通じていくつもあります。
「この時期は難しい」が積み重なると、使える時期がなくなってしまいます。
園の雰囲気や周囲への気遣い
「周りが休んでいないのに…」という空気感も、有給取得を遠ざける要因のひとつです。
誰かが有給を使うと嫌な顔をされるような職場の雰囲気が残っているケースもあります。これは法律の問題ではなく、職場の風土の問題です。
5. 保育士が有給休暇をスムーズに取るためのコツ

現在の職場環境の中でも、少し工夫するだけで有給が取りやすくなることがあります。申請のタイミングや伝え方を見直してみましょう。
早めに相談・申請する
直前に伝えるより、できるだけ早めに申し出ることで、シフトの調整がしやすくなります。
候補日をいくつか提示すると、園側も対応しやすくなります。
行事の時期を避ける
運動会や発表会の直前・直後は、現場が慌ただしくなりがちです。
こうした繁忙期を外して申請するだけで、受け入れてもらいやすくなることが多いです。
しっかり引き継ぎをする
休む前に担当業務を整理し、連絡事項をメモにまとめておくと、周囲も安心しやすくなります。ちょっとした配慮が、職場で有給を取りやすい雰囲気づくりにつながります。
体調不良のときは遠慮なく連絡を
体調が悪いのに無理して出勤しても、子どもたちへの保育の質が下がってしまいます。
当日の急な連絡でも、有給として処理することは法律上可能です。早めに園へ連絡し、有給扱いにしてもらえるか確認しましょう。
取得の理由は「私用のため」でOK
有給休暇は、取得理由を詳しく説明する義務はありません。
「何の用事か」と聞かれても、「私用のため」と答えるだけで十分です。旅行でも、ただ家で休みたいだけでも、理由は自由です。
6. 保育士が退職時に有給消化する方法|全部使い切るための手順

退職を控えているなら、残っている有給はしっかり使い切って辞めることができます。
退職時の有給消化は法律上の権利であり、園側が拒否することはできません。
退職時は「時季変更権」が使えない
通常、園側には「正常な業務運営を妨げる場合」に有給の取得時期をずらすよう求める「時季変更権」という権利があります。
ただし、退職後に有給を持ち越すことはできないため、退職が決まっている状況ではこの権利を行使することができません。
つまり、退職日が決まっている場合、残っている有給をすべて取得してから辞めることは法律上の権利であり、園側はそれを断ることができません。
有給消化のスケジュールの立て方
退職時に有給を消化するには、以下の手順で進めると整理しやすくなります。
- 残っている有給日数を確認する(給与明細や就業規則を確認)
- 退職日を決める
- 退職日から有給日数分をさかのぼった日を「最終出勤日」とする
- 有給申請書と退職届を同時に提出する
たとえば、退職日が6月30日で有給が20日残っている場合、最終出勤日は5月下旬ごろになります。この期間を次の職場の準備や転職活動に充てることもできます。
有給消化中も社会保険は継続される
有給を消化しながら在籍している間は、社会保険(健康保険・厚生年金)も継続されます。
退職後すぐに保険を切り替えなくてよいため、転職先への入社が多少遅れても安心です。
7. 保育士の有給が取れない場合の対処法|労基署への相談手順も解説

何度申請しても断られる、または強い圧力をかけられている場合は、ひとりで抱え込まずに外部の力を借りることができます。
段階的な対処法を確認しておきましょう。
まずは園内で相談してみる
主任や施設長に「有給が取れていない」という状況を率直に伝えてみましょう。
忙しさの中で見落とされているだけのケースもあります。申請の記録(メモや書面のコピー)を残しておくと、状況を説明するときに役立ちます。
労働基準監督署(労基署)に相談する
園内での解決が難しければ、都道府県の労働基準監督署に相談できます。相談は無料で、匿名でも受け付けています。
相談時に持参すると役立つもの
- 有給申請書のコピー(書面で申請した場合)
- 断られたやり取りのメモや記録
- シフト表・給与明細
- 就業規則(入手できれば)
悪質なケースでは、労基署が園に是正指導を行うこともあります。
転職という選択肢もある
有給が取れない原因が人員不足や園の文化にある場合、その環境自体を変えることが最も根本的な解決策になります。
今の職場でがんばり続けることだけが正解ではありません。働きやすい環境を選ぶことも、大切なキャリアの判断です。
8. 有給が取りやすい保育園の見分け方|転職・就職先を選ぶポイント

転職や就職を考えているなら、最初から有給が取りやすい園を選ぶことが根本的な解決につながります。
求人票だけでは見えにくい部分もあるので、以下のポイントを参考にしてみてください。
フリー保育士(担任を持たない保育士)が配置されている
担任を持たないフリーの保育士が在籍している園は、誰かが休んでも現場が回りやすい体制が整っています。
求人票に記載がない場合は、面接時に確認してみましょう。
ICTや業務の効率化を進めている
書類のデジタル化や連絡帳のアプリ化など、保育士の事務負担を減らす取り組みをしている園は、労働環境の改善に積極的な傾向があります。
こうした園では有給申請にも柔軟に対応してくれるケースが多いです。
大手法人が運営している
大手法人が運営する園は、人員管理や休暇制度が整備されやすく、有給取得のルールが明確な傾向があります。
個人運営の小規模園と比べると、制度面での安心感があります。
有給取得率を公開している、または面接で確認できる
「昨年の有給取得率を教えてもらえますか?」と面接で聞いてみましょう。
具体的な数字を示せる園は、労働環境に自信を持っているサインです。一方、曖昧な答えしか返ってこない場合は注意が必要です。
行事が少ない、または年間を通じて分散している
大型行事が集中している園は、その前後で有給が取りにくくなります。
年間の行事スケジュールを確認したり、「有給を取りやすい時期はいつごろですか?」と聞いてみるのも有効です。
9. 保育士の有給休暇まとめ|日数・権利・取りやすい園の選び方

保育士の有給休暇は、正社員・パートを問わず法律で保障された権利です。
勤続6ヶ月・出勤率8割以上で10日が付与され、年5日以上の取得は園側の義務でもあります。
「取りにくい」と感じる背景には人手不足や職場の雰囲気といった構造的な問題がありますが、申請のタイミングや引き継ぎの工夫で改善できることも多いです。
退職時の有給消化も法律上の権利であり、園側は拒否できません。それでも取れない場合は、労基署への相談や転職という選択肢があります。
有給の取りやすい職場は、フリー保育士の配置・ICT化・大手法人の運営といった観点で見分けることができます。正しい知識を持つことが、働きやすい環境をつくる第一歩になります。