幼稚園で働くことを検討している方や、保育士・幼稚園教諭として転職を考えている方のなかには、「預かり保育って、普通の保育と何が違うの?」「資格がなくても働けるの?」と疑問に思っている方も多いはずです。
本記事では、制度の基本から一時保育・延長保育との違い、無償化の仕組み、働くために必要な資格、求人選びのポイントまで、わかりやすく解説します。
- 預かり保育の仕組みと実施状況、一時保育・延長保育との違い
- 無償化の条件と、働くために必要な資格・配置基準
- 預かり保育で働くメリット・デメリットと、向き不向きの見極め方
1.預かり保育とは?制度の定義と基本的な仕組み

預かり保育とは、幼稚園や認定こども園が、通常の教育時間(標準的には9:00〜14:00頃)の前後に、在園中の1号認定の子どもを引き続き預かる保育サービスです。
文部科学省の幼稚園教育要領では「教育課程に係る教育時間の終了後等に行う教育活動」と定められており、保護者の就労支援や子育て家庭のサポートを目的としています。
預かり保育が必要とされる背景
共働き家庭の増加とともに、「幼稚園に通わせたいけれど、通常の保育時間では仕事と両立できない」というニーズが高まっています。
こうした背景から、国を挙げて普及が進んでいます。
全国の実施状況
文部科学省の令和5年度幼児教育実態調査によると、預かり保育を実施している幼稚園は全体の91.0%にのぼります。
令和元年度時点の内訳は私立:96.9%、公立:70.5%であり、17時以降まで預かりを実施している園も約7割(令和元年度)にのぼるなど、共働き家庭の実態に合わせた対応が広がっています。
2.預かり保育・一時保育・延長保育の違い

「預かり保育」「一時保育(一時預かり)」「延長保育」は、似ているようで対象や仕組みが大きく異なります。
働く前に、3つの制度の違いをきちんと押さえておきましょう。
| 項目 | 預かり保育 | 一時保育(一時預かり) | 延長保育 |
|---|---|---|---|
| 主な実施施設 | 幼稚園・認定こども園 | 保育所・幼稚園・地域子育て支援センターなど | 保育所・認定こども園 |
| 対象の子ども | 在園中の1号認定児(幼稚園通園児) | 未就園児 | 在園中の2号・3号認定児 |
| 利用理由 | 就労・疾病・リフレッシュ目的など | 保護者の急な事情、育児支援 | 就労等で標準保育時間を超える場合 |
| 利用時間の目安 | 通常教育時間の前後〜17:00〜18:00頃 | 施設により異なる | 標準保育時間(11時間)終了後 |
| 制度の根拠 | 幼稚園教育要領に基づく教育課程外活動 | 子ども・子育て支援法に基づく一時預かり事業 | 保育所の保育時間延長として実施 |
最大の違いは「対象の子ども」と「実施施設」です。
預かり保育はあくまで幼稚園に通っている子(1号認定児)が対象で、保育所の延長保育や未就園児を受け入れる一時保育とは別の制度です。
参考:こども家庭庁|子ども・子育て支援制度 / こども家庭庁|一時預かり事業(幼稚園型)関連情報
3.預かり保育の料金と幼児教育・保育の無償化

利用料は園によって月額定額・日額・時間単位などさまざまですが、条件を満たすと幼児教育・保育の無償化の給付が受けられます。
無償化の対象となる条件(新2号認定)
無償化給付が適用されるのは、市区町村から「施設等利用給付認定(新2号認定)」を受けた世帯です。
主な要件は以下のとおりです。
- 幼稚園・認定こども園に通っている3歳〜5歳の1号認定児
- 保護者が就労・妊娠・出産・疾病・介護などを理由に、自治体から「保育の必要性あり」と認められている
日額450円・月額11,300円上限の計算方法
新2号認定を受けると、以下の範囲で給付されます。
- 日額上限:450円
- 月額上限:11,300円(450円 × 利用日数)
たとえば月20日利用した場合、450円 × 20日 = 9,000円が給付の目安です(上限11,300円の範囲内)。
4.預かり保育の1日のスケジュール例

実際の預かり保育では、どのような流れで保育が行われているのでしょうか。
通常期と長期休暇中のスケジュール例を確認しましょう。
通常期のスケジュール例(早朝+夕方の場合)
| 時間帯 | 活動内容 |
|---|---|
| 7:30〜8:30頃 | 早朝預かり保育(自由遊び、絵本など) |
| 8:30〜14:00頃 | 通常の幼稚園教育時間 |
| 14:00〜15:00頃 | 預かり保育開始・おやつ |
| 15:00〜16:30頃 | 自由遊び・集団活動・制作など |
| 16:30〜18:00頃 | 順次降園・保護者のお迎え |
体操・英語・音楽などの課外教室が組み込まれている園もあります。
長期休暇(夏休み・冬休み)の扱い
長期休業中も、多くの幼稚園で夏期預かり保育などとして実施されています。
厚生労働省・こども家庭庁の資料(令和元年度)によると、私立幼稚園の長期休業中の平均実施日数は46.5日(公立は平均18.5日)です。
終日保育となるため、昼食対応(弁当持参か給食提供かは園による)やプールなどの季節行事が加わることもあります。
参考:厚生労働省・こども家庭庁|幼稚園における預かり保育の推進(PDF)
5.預かり保育で働くために必要な資格と配置基準
預かり保育は通常保育より資格要件が緩やかで、保育補助としての採用枠もあります。
働く前に、配置ルールを確認しておきましょう。
必要な資格と職員配置の「3分の1ルール」
配置基準は、こども家庭庁・文部科学省の基準で定められています。
担当職員のうち3分の1以上が、保育士または幼稚園教諭免許状のいずれかを持っていることが必要です。
残りの3分の2未満は、以下のような人材を保育補助として配置できます。
- 小学校教諭の免許状を持つ人
- 子育て支援員研修を修了した人
- 保育士養成校に在学中の学生(実習目的)
- 一定の経験を持つ保育補助者
この柔軟なルールのおかげで、資格なし・ブランクあり・短時間勤務希望など、多様な働き方が可能になっています。
求められる資格の種類まとめ
| 資格の種類 | できる仕事の範囲 |
|---|---|
| 保育士(国家資格) | 中心的な保育者として働ける |
| 幼稚園教諭免許状(一種・二種) | 中心的な保育者として働ける |
| 小学校教諭免許状 | 保育補助として働ける |
| 子育て支援員(研修修了者) | 保育補助として働ける |
| 資格なし | 3分の2未満の範囲で補助として働ける |
6.預かり保育で働くメリット・デメリット

預かり保育は通常の保育所とは働き方が異なります。
メリット・デメリットに加え、現場での違いもあわせて確認しておきましょう。
メリット
① 短時間・パート勤務の求人が多い
主な勤務時間は14:00〜18:00前後です。
「午後だけ働きたい」「子どものお迎えがある」という方でも働きやすく、育児中の保育士やブランク明けの方にとって選びやすい職場です。
② 少人数・縦割り保育で、じっくり関わりやすい
利用者のみが対象のため、通常保育より少人数になりやすいです。異年齢(縦割り)保育が行われることも多く、落ち着いた環境の中で子ども一人ひとりに丁寧に関わることができます。
③ 資格なし・ブランクありでも働けるケースがある
3分の1ルールにより、資格なし・育児休業明けの方でも働きやすい環境です。
実務を重ねながら資格取得を目指すこともできます。
④ ライフステージに合わせた雇用形態を選べる
パートタイムや時給制の非常勤など、多様な雇用形態の求人が揃っています。
デメリット・注意点
① 賃金・福利厚生が保育所より低くなる場合がある
パート・非常勤が多い分、時給や賞与・社会保険の条件が保育所と異なることがあります。
求人票の労働条件は事前にしっかり確認しましょう。
② 通常保育の担任との引き継ぎが発生する
子どもの状態を引き継ぐため、担任との情報共有が必要です。
園によっては申し送りや記録業務が加わることもあります。
③ 長期休暇中は業務量が増える
夏休み・冬休みは終日対応となるため、シフトや業務量が増えます。
年間を通じた働き方のイメージを事前につかんでおきましょう。
通常保育(保育所)と現場で感じる主な違い
制度上の違いだけでなく、実際に働いてみたときの感覚の差も知っておくと、転職後のギャップを減らせます。
| 項目 | 預かり保育 | 通常保育(保育所) |
|---|---|---|
| クラス担任制 | 基本なし(日替わりのメンバーと関わる) | あり(固定クラスを年間担任) |
| 記録・書類業務 | 比較的少ない | 連絡帳・指導計画・児童要録など多い |
| 大型行事への関与 | 低い(準備等は少ない) | 高い(行事準備が年間業務の大きな比重) |
| 保育の中心 | 自由遊びの見守り・安全管理 | 保育計画に沿った活動と記録 |
書類や行事準備の負担を減らして、子どもとの関わりに集中したい方には働きやすい環境です。
7.預かり保育に向いている人・向いていない人
預かり保育は自由度が高い一方、向き不向きがはっきりしています。
応募前に、自分の状況や希望と照らし合わせてみましょう。
向いている人
- 育児中で短時間勤務を希望する方
:午後のみのシフトが多く、家庭と両立しやすい - ブランクがある方
:少人数・書類業務が少なめで、段階的な復帰に向いている - 子ども一人ひとりとじっくり関わりたい方
:縦割り・少人数で丁寧に関わりやすい - 実務経験を積みながら資格を目指したい方
:補助枠からスタートできるケースがある
向いていない人
- 安定した月収・正規雇用を重視する方
:パート・非常勤求人が中心で正規は少ない - 長期休暇中も同じペースで働きたい方
:夏・冬休みは終日対応で業務内容が変わる - 保育計画の立案や行事運営に関わりたい方
:その機会は通常保育より少ない
8.預かり保育の求人を選ぶときのポイント

通常の保育所とは異なる確認事項もあります。応募前に以下をチェックしておきましょう。
勤務時間と曜日
早朝のみ・夕方のみ・通し勤務など、求人によって設定が異なります。
週何日・何時間の勤務かを確認しましょう。
長期休暇中の対応
夏休みや冬休みの勤務有無や内容を事前に確認しておくことが大切です。
資格要件の有無
「保育士資格必須」とする園もあります。
3分の1ルールで無資格でも応募できる求人かどうかを確認しましょう。
活動内容と職場環境
課外教室(スポーツ・英語・音楽)の指導補助が求められる場合もあります。自分のスキルや経験と合っているか確かめておきましょう。
雇用形態と社会保険
パート・非常勤の場合、社会保険の適用要件(週20時間以上など)を満たすかどうかも確認しましょう。
よくある質問
-
担当する子どもは毎日変わりますか?
-
園によりますが、固定クラス担任制でないケースが多く、日によって関わる子が変わることがあります。
特定の子と長く関わりたい場合は、勤務体制を事前に確認しておきましょう。
-
おやつや給食は提供されますか?
-
おやつは多くの園で提供されます。
昼食は弁当持参・給食提供など園によって異なります。
長期休暇中は終日保育となるため、担当者として昼食調整が必要になる場合もあります。
業務内容の詳細は、求人票や面接で事前に確認しておきましょう。
-
保育所に落ちた場合の代わりになりますか?
-
対象が異なるため、代わりにはなりません。
預かり保育は幼稚園に在籍する1号認定児(3歳〜)が対象です。
ただし、幼稚園の預かり保育と新2号認定の給付を組み合わせれば、就労しながら子どもを預けることはできます。
詳しくはお住まいの自治体窓口にお問い合わせください。
-
長期休暇(夏休み・冬休み)中も出勤が必要ですか?
-
長期休暇中も預かり保育を実施する園が多く、その場合は終日保育となるため業務量も増える傾向があります。
ただし、夏期のみ非勤務・シフト対応など、対応方法は園によって異なります。
「長期休暇中の勤務有無」は、求人票や面接で必ず確認しておきましょう。
まとめ:預かり保育の制度を正しく理解して、自分に合った働き方を見つけよう

預かり保育は、幼稚園・認定こども園が通常の教育時間外に在園中の1号認定児を預かる制度で、一時保育・延長保育とは対象・実施施設が根本的に異なります。
保護者が新2号認定を受けると月額最大11,300円の無償化給付が適用され、担当職員の3分の1以上が有資格者であれば補助者は資格不問で配置が認められています。
短時間・パート勤務の求人が多く、書類や行事準備の負担が少ない現場は、育児中の方やブランクからの復帰を検討している方にとって選択肢のひとつになっています。
制度をきちんと理解したうえで、自分のライフスタイルやキャリアプランに合った求人を探してみてください。