9月は、夏の疲れをリセットしながら、秋の豊かさへと移り変わる月です。
運動会・敬老の日・秋の自然観察……行事を通じて「秋ってこんなに楽しい!」という記憶が、子どもたちの心に深く刻まれます。
一方で、まだ残暑が続く中での熱中症対策や、運動会に向けた練習による体と心の疲れへの配慮も欠かせません。子どもの安全と意欲を両立させながら、秋の体験を思いきり楽しんでもらうことが、9月の保育の大きなテーマです。
この記事では、9月の保育行事を一覧で整理しつつ、それぞれのねらいや現場での取り入れ方を解説します。
9月はどんな保育行事がある?

9月の主な保育行事・テーマ
このように9月は、夏から秋へと季節が移り変わる中で、体を動かす喜びと秋の自然への気づきが重なる月です。
行事を点として捉えるのではなく、日々の保育とつなげながら積み重ねることで、行事の意味がより深まります。
朝晩と昼間の気温差が大きくなるこの時期の体調変化にも目を向けながら、子どもたちと一緒に秋の訪れを感じることを大切にしましょう。
運動会・体育祭|保育園での取り入れ方とねらい

保育園の運動会はどう行う?
運動会は、多くの保育園で9〜10月に実施される、一年間の大きなハイライトの一つです。「勝ち負け」よりも、子どもが「やってみたい」「できた!」という達成感を積み重ねることが、保育園の運動会の本質です。
規模は園によってさまざまですが、「子どもが主役になれる仕掛け」を意識することがポイントです。保護者が「わが子の成長」を感じられる演出を大切にしましょう。
年齢別の関わり方と発達への効果
運動会のねらいは「上手にできること」ではありません。
「友だちと一緒にやり遂げた」という経験が、子どもの自信の土台になることが本質です。
練習期間中の配慮点
保護者参加型にする場合の配慮点
保護者参加の運動会を行う場合は、事前の案内・当日の導線・撮影ルールなどを丁寧に設計することが重要です。
「子どもの姿を見てもらう」という目的を明確にすることで、保護者も行事の意味を理解した上で参加できます。保護者参加が難しい家庭への配慮も忘れずに行いましょう。
保護者への説明文例
「今月は運動会に向けて、子どもたちが毎日少しずつ練習を重ねています。
勝ち負けよりも、友だちと一緒に体を動かす喜びと達成感を大切にした運動会にしていきます。詳細は別途ご案内いたします。」
敬老の日|保育園での取り入れ方とねらい

敬老の日とは?子どもへの伝え方
敬老の日は、長年社会に尽くしてきたお年寄りを敬い、長寿を祝う国民の祝日(9月第3月曜日)です。
保育園では「お年寄りへの感謝」という意味よりも、「おじいちゃん・おばあちゃんへの大切な気持ちを届けること」として身近に感じてもらうのが一般的です。
「大好きなおじいちゃん・おばあちゃんに贈り物を作ろう」という言葉だけで十分伝わります。
保育園で敬老の日を取り扱う意味
敬老の日のねらいは、自分を大切にしてくれる人への感謝の気持ちを、言葉や形で表現する体験を積むことです。
「ありがとう」という感情を育てることが、この行事の本質です。
0〜5歳児への伝え方のポイント
年齢によって、理解の深さは異なります。
「ちゃんと作らなきゃ」というプレッシャーより、「大好きな気持ちを届けよう」という温かい雰囲気を先に作ることがポイントです。
家庭環境の差への配慮
祖父母と離れて暮らす家庭・祖父母がいない家庭など、さまざまな事情があります。
「大切に思っている人への感謝」という形で広く受け取れる伝え方をしましょう。
製作物の贈り先を「大好きな人」と表現することで、どの子も自分なりの思いを込められます。
壁面・製作とのつなげ方
手形・足形を使ったカード・折り紙の花束・似顔絵など、敬老の日の製作は幅広い年齢で取り組めます。
「自分が作ったものを大切な人に渡す」体験が、子どもの自己肯定感と他者への思いやりを育てます。
連絡帳・おたよりに使える説明文
「今日は敬老の日に向けて、大切な人へのプレゼントを作りました。
『おばあちゃんが喜ぶかな』『ありがとうって言いたい』と、子どもたちの温かい言葉がたくさん生まれた時間でした。ぜひ受け取ってあげてください。」
秋の自然観察・虫・木の実探し|9月の季節行事のねらい

保育園での秋の自然観察はどう行う?
どんぐり・まつぼっくり・赤とんぼ・コオロギ……9月は夏から秋への変化を自然の中でリアルに感じられる季節です。
「特別な遠足」として計画することもできますが、園庭や近隣の公園でも十分に秋の訪れを体感することができます。
年齢別の関わり方と発達への効果
自然体験のねらいは「知識を覚えること」ではありません。
「季節が変わっていく」ことに気づく感性を育てることが、幼少期の自然体験の本質です。
安全に楽しむための配慮点
製作・壁面とのつなげ方
観察してきた木の実・落ち葉・虫をテーマに製作へつなげると、体験と表現が結びつきます。
どんぐりで作るコマ・落ち葉のスタンプ・赤とんぼの折り紙など、「見つけてきたものを作る・飾る」喜びが自然体験をより深めます。
連絡帳・おたよりに使える説明文
「今日は散歩でどんぐりをたくさん見つけました。『まるいね』『これ大きい!』と大興奮の子どもたち。
明日はどんぐりを使って遊んでみようと思います。」
お月見(十五夜)|保育園での取り入れ方とねらい

お月見とは?子どもへの伝え方
お月見(十五夜)は、秋の満月を愛でながら、稲の収穫に感謝する日本の伝統行事です。
すすき・お団子・里芋などを飾り、月を眺める習慣があります。
保育園では宗教的な意味合いよりも、「月を見上げながら秋を感じる、日本の美しい習慣」として伝えるのが一般的です。
「丸くて大きなお月さまを見る日だよ」という言葉で十分伝わります。
保育園でお月見を取り扱う意味
お月見のねらいは、日本の季節の文化・自然の美しさに感性で触れることです。
「月ってこんなに大きくてきれいなんだ」という感動が、子どもの自然への興味を広げます。
0〜5歳児への伝え方のポイント
「知識として覚えること」より、「月を見て綺麗だなと感じる経験」そのものを大切にすることがポイントです。
壁面・製作とのつなげ方
丸いお月さま・うさぎ・お団子・すすきなど、お月見のモチーフは壁面製作に取り入れやすいものばかりです。
子どもが作ったお団子の製作を飾ったり、「みんなで作ったお月見飾り」として保育室を彩ったりすることで、行事への参加感が生まれます。
保護者への説明文例
「今月は十五夜に合わせて、日本の秋の習慣『お月見』についてお話ししました。
ご家庭でも晴れた夜に、お子さんと一緒にお月さまを見上げてみてください。」
残暑対策・生活リズムの立て直し|9月の保健行事

なぜ9月に生活リズムの見直しが必要なのか
9月は夏休み明けで、家庭の生活リズムが乱れたまま登園してくる子どもが増えやすい時期です。
また、まだ残暑が続く中で運動会の練習も加わるため、体への負担が重なりやすい月でもあります。
「夏の疲れ」と「秋の行事への期待」が混在するこの時期、子どもの体調変化を丁寧に観察することが特に重要です。
年齢別の関わり方
「ちゃんと寝なさい」という指示より、「元気な体で運動会を楽しもう」という前向きな動機づけが、子どもの心を動かします。
残暑・気温差への安全管理の工夫
保護者への説明文例
「9月に入っても引き続き残暑が続いています。運動会の練習も始まり、子どもたちの体への負担が増える時期です。
早めの就寝と朝食の確保にご協力をお願いします。体調の変化を感じた際はお気軽にご連絡ください。」
避難訓練(9月)|防災の日に合わせた安全教育

9月の避難訓練はどう行う?
9月1日は「防災の日」です。この時期に合わせて、地震・津波・火災を想定した訓練を実施する園が多くあります。
1923年の関東大震災に由来するこの日を、防災意識を高めるきっかけとして活用しましょう。
9月は台風シーズンでもあります。地震だけでなく、台風・豪雨・土砂災害への備えも併せて確認しておくことが大切です。
年齢別の関わり方
- 乳児:保育士に抱っこされながら、素早く安全な場所へ移動する動きを繰り返す
- 幼児:「おかしも(押さない・かけない・しゃべらない・戻らない)」の約束を自分から言えるようにする
- 5歳児:「なぜ訓練をするのか」を考え、防災の日の意味を絵本や話し合いで知る
完璧な訓練よりも、「先生の声を聞いて、一緒に動ける」という経験を丁寧に積み重ねることが大切です。
保護者への説明文例
「9月1日の防災の日に合わせて、今年度5回目の避難訓練を行いました。今回は地震を想定した訓練を実施しました。
ご家庭でも、地震のときの約束や避難場所について、ぜひ話し合ってみてください。」
9月の保育行事と「秋の子どもの姿」
9月に起きやすい子どもの姿
これらはすべて、子どもが季節の変化と行事への期待に正直に反応しているサインです。問題として捉えず、体と気持ちの両方を丁寧に見守ることが保育士の腕の見せ所です。
運動会練習を「楽しい」にする視点
運動会の練習は、繰り返しになりやすい分、「できるようになった」という小さな成長を見つけて言葉にすることが子どもの意欲を保つ鍵です。
「上手だね」より「昨日よりそろってたね」「最後まで走れたね」という具体的な声かけが効果的です。
保育行事を生活リズムにつなげる視点
行事は「特別な日」ではなく、「ここにいると楽しい」という記憶を積み重ねる機会です。
運動会・敬老の日・お月見・秋の自然観察——どの行事も、秋という季節と生活と結びついた「生きた学び」の一場面として位置づけましょう。
年齢別|9月の保育行事の関わり方

0歳児:感触・音・涼しさで秋を感じる
行事への参加よりも、落ち葉のカサカサした感触・虫の音・涼しくなった朝の空気といった感覚的な体験がこの時期の中心です。
特定の保育士との信頼関係を基盤に、安心した環境で秋の季節に触れられるよう配慮しましょう。
1・2歳児:試す・驚く・繰り返す
好奇心と慎重さが混在する年齢です。どんぐり拾いや秋の製作では、「やってみたら楽しかった」という経験を意識的に積み重ねることがポイントです。
「もう一回!」という繰り返しの要求を大切に受け止めましょう。
3〜5歳児:理由を知り、表現し、友だちと楽しむ
「なぜ葉っぱが赤くなるの?」「お月見のうさぎって本当にいるの?」という問いが生まれてくる年齢です。
子どもの「なぜ?」を受け止め、一緒に絵本で調べたり観察を続けたりする関わりが、知的好奇心を育てます。運動会も、意味を理解した上で友だちと力を合わせて楽しめるようになります。
9月の保育行事でよくある質問

運動会の練習を嫌がる子への対応は?
まず「嫌だ」という気持ちを受け止めることが先決です。
無理に参加させず、見ているだけでもOKという安心感を届けながら、「やってみたら楽しかった」という体験を少しずつ積み重ねることが大切です。
敬老の日に祖父母がいない子への対応は?
「大切に思っている人へ」という広い表現で製作を進めましょう。
贈り先を「好きな人・大切な人」として自由に決められるようにすることで、どの子も自分なりの思いを込めることができます。
お月見当日が曇りや雨だった場合は?
「今夜は雲の向こうにお月さまが隠れているんだよ」と伝えるのも一つの関わり方です。
月が見えなくても、「月を思う気持ち」そのものが文化体験になります。絵本や製作で十分に補えます。
運動会の勝ち負けで泣く子への対応は?
「悔しかったね」とまず気持ちを受け止めることが最優先です。
無理に切り替えさせようとせず、「最後まで走れたね」「一生懸命やれたね」と過程を認める声かけが、悔しさを次への意欲に変えます。
行事が負担にならない工夫は?
準備を簡素化し、子どもの姿を最優先に考えましょう。
「やること」より「子どもがどう感じるか」を軸にすると、行事の見直しがしやすくなります。
9月は運動会準備と残暑対策が重なるため、チームで役割を分担し、無理のない計画を立てることが特に重要です。
まとめ|9月の保育行事は”夏の余韻と秋の始まりをつなぐ時間”

9月の保育行事は、子どもたちが夏から秋へと移り変わる季節の中に「楽しさ」「成長」「友だちとのつながり」を見つけるための、大切な積み重ねです。
行事の準備に追われる中でも、運動会で懸命に走る子どもの表情、敬老の日の製作を「これおばあちゃんにあげる!」と誇らしげに持つ姿、どんぐりを見つけて目を輝かせる瞬間を見逃さない余裕を持てるよう、チームで分担しながら無理のない計画を立てることが大切です。
秋を「ただ涼しくなる季節」ではなく、「この季節だからこそできること」に変えていく——その視点が、子どもたちの豊かな9月をつくります。