公立保育園で働く公務員保育士の年収は、私立保育園と比べてどう違うのでしょうか。
「安定しているのはわかるものの、実際に支給される金額がどのくらいなのか」と、キャリアプランを描くうえで関心を持つケースは少なくありません。
こども家庭庁の最新調査をもとに、役職・年代・地域別の給与実態と、私立との差がどこで生まれるかをわかりやすく紹介します。
- 公務員保育士の平均年収と年代別の目安について
- 役職・地域によって年収がどう変わるかについて
- 私立保育士との給与差が広がる仕組みについて
1. 公務員保育士の平均年収はいくら?

こども家庭庁の調査によると、公立保育園で働く常勤保育士の平均月額給与は約36万6,000円、年収(賞与含む)は約439万2,000円です。
同調査で私立保育園の常勤保育士の平均年収は約417万7,000円であるため、公立のほうが約21万円高い水準にあります。ただし、この差は一般保育士のうちは比較的小さく、役職が上がるにつれて大きく開くのが公務員給与の特徴です。
なお、一部の記事では「地方公務員の一般行政職の平均(約652万円)」を公務員保育士の年収として紹介しているケースがあります。
しかしこれは全職種の平均であり、保育士単独のデータではないため注意が必要です。この記事では保育士に限定した数値を使用しています。
出典:こども家庭庁「令和6年度 幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査 集計結果(速報値)」
2. 年代別に見る公務員保育士の年収の目安

公務員の給与は自治体の「給料表」に基づいて毎年上がる仕組みのため、勤続年数が増えるほど着実に年収が伸びます。
総務省のデータをもとにした年代別の目安は以下のとおりです。

20代のうちは私立保育士と年収の差が小さいケースもあります。しかし30代以降、年功序列に沿って基本給が上がり続けるため、勤続年数が長くなるほど私立との差が開いていく構造になっています。
なお、手取り額の目安として、東京都で勤務する30代の公務員保育士は月額の手取りが約23万円程度になるとされています。
社会保険料や住民税などが引かれるため、額面よりも2〜3割ほど少なくなる点は覚えておきましょう。
3. 公務員保育士の年収は役職が上がるほど私立との差が広がる
公務員保育士の年収が私立と大きく差がつくのは、主任・園長クラスになってからです。
こども家庭庁の調査データをもとに、同一役職での公立と私立の年収を比べると、次のようになります。

主任になった時点での差は約109万円。長く勤めてキャリアを積むほど、生涯年収という視点では公立勤務のメリットが大きくなります。
出典:こども家庭庁「令和6年度 幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査 集計結果(速報値)」
4. 公務員保育士の年収は地域によってどう変わる?

公務員の給与には「地域手当」という加算があり、物価や生活費が高い都市部ほど基本給に上乗せされます。東京都特別区では基本給の20%相当が地域手当として支給されます。
一方、地方の自治体では地域手当が0〜3%程度にとどまるケースも多く、同じ役職・同じ勤続年数でも都市部と地方では年収に差が生じます。
採用試験を受ける自治体の給与規定を事前に確認することが大切です。
なお、初任給についても自治体ごとに異なります。一般的な目安として、地方の中核市では月額約18万円台が多く、政令市や東京都では月額20万円を超えるケースもあります。
5. 公務員保育士のボーナスと退職金

年収を考えるうえで、月給だけでなくボーナスと退職金も重要な要素です。
公務員保育士はこの2つが私立と比べて手厚く、長く勤めるほど生涯収入の差が大きくなります。
ボーナス(期末・勤勉手当)
公務員保育士のボーナスは、年間で月給の約4.5〜4.6ヶ月分が支給されます。
人事院勧告によって毎年見直され、経営状況によってカットされることがないのは私立との大きな違いです。
退職金
退職金は地方自治体の退職手当条例に基づいて算定されます。
勤続30年以上の場合、退職金は一般的に2,000万円を超えるケースが多く、長く勤め続けることで生涯所得として非常に有利な水準になります。
私立の保育園では退職金制度がない、または金額が少ないところも多いため、長期的な視点では大きな差につながります。
6. 公務員保育士ならではのデメリットも知っておこう

給与や安定性というメリットがある一方で、公務員保育士固有の注意点もあります。
受験前に知っておきたいポイントをまとめました。
定期的な異動がある
公立保育園では、2〜4年おきに別の園や、障害児施設・子育て支援センターなどへの異動が発生します。
「同じ子どもたちの成長を長く見守りたい」という希望がある場合は、事前に自治体の異動運用を確認しておくとよいでしょう。
副業・兼業が原則禁止
地方公務員法により、営利目的の副業は原則として禁止されています。
ピアノ講師やベビーシッターなどの副業を希望している場合は、公務員としての制約が生じる点に注意が必要です。
採用試験の倍率が高い
自治体によっては採用試験の倍率が5〜10倍以上になるケースもあります。
筆記試験(教養・専門科目)と実技試験(ピアノ・読み聞かせなど)の両方の対策が必要です。
また、多くの自治体で年齢上限(30歳前後)が設けられているため、転職を考えている場合は早めに確認しておきましょう。
会計年度任用職員という選択肢もある
正規の公務員採用試験に合格できなかった場合でも、「会計年度任用職員(非常勤)」として公立保育園で働くルートがあります。
給与水準や待遇は正規職員より低くなりますが、公立で経験を積みながら再受験を目指す保育士も多くいます。
7. 公務員保育士に向いている人・向いていない人

年収や制度の内容を踏まえたうえで、公務員保育士という働き方が自分に合っているかどうかを確認しておきましょう。
向いている人
給与・ボーナス・退職金といった収入面の安定を最優先にしたい人に向いています。
年功序列で着実に給与が上がる仕組みのため、20〜30年単位で働くことを前提にしている人ほどメリットを感じやすいです。
また、育児休業や有給休暇など福利厚生が整った環境で長期的にキャリアを積みたい人にも適しています。
向いていない人
「同じ子どもたちの成長をずっと見守りたい」という気持ちが強い人は、2〜4年ごとの定期異動がストレスになる可能性があります。
また、保育の仕事と並行してピアノ講師などの副業を続けたい人にとっては、兼業制限が大きなネックになります。
採用試験の準備にも相応の時間と労力がかかるため、すぐに転職したいという状況には向いていません。
8. 公務員保育士の年収まとめ

公務員保育士の年収は常勤で約439万円が目安で、役職が上がるにつれて私立との差が大きくなる構造です。
ボーナスや退職金を含めた生涯収入の安定性は私立と比べて高く、長く働き続けることで得られる経済的なメリットは大きいといえます。
一方で異動や副業制限などの制約もあるため、自分の働き方の希望と照らし合わせて検討することが大切です。