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保育士の働き方改革|残業・持ち帰り仕事をなくす4つの方法

「残業が当たり前」「家に仕事を持ち帰るのは仕方ない」

そう感じている保育士はまだまだ多いのではないでしょうか。保育士の働き方改革は法律で義務化されているにもかかわらず、なかなか現場に届いていないのが現実です。

この記事では、改革が進まない理由から具体的な取り組み・実際の事例までをわかりやすく紹介します。

この記事を読んでわかること
  • 働き方改革で保育士の何が、どう変わったのかについて
  • 残業・持ち帰り仕事をなくすための4つの具体的な方法について
  • 働き方改革が進んでいる園の見分け方と、自分から動く方法について
目次

1. 保育士の働き方改革で何が変わったのか

1. 保育士の働き方改革で何が変わったのか

保育士の働き方改革と聞いても、「自分の現場には関係ない」と感じている方もいるかもしれません。

しかし、法律はすでに変わっており、保育士一人ひとりに直接関わるルールが定められています。ここでは、特に知っておきたい3つのポイントを整理します。

残業は「月45時間まで」というルールができた

2019年に施行された働き方改革関連法によって、すべての職場に残業時間の上限が設けられました。原則として月45時間・年360時間が上限です。

どうしても必要な場合でも、年間720時間・1ヶ月100時間未満を超えることはできません。

この上限を超えると、園が法律違反として罰則を受ける可能性があります。「忙しいから残業は仕方ない」は、もう通用しない時代になっています。

年に5日、有給休暇を取るのは「義務」になった

年間10日以上の有給休暇がある人に対して、園は必ず年5日の有給を取得させる義務があります。

「取りにくい雰囲気」「申請しづらい」という状況を放置していると、園の管理責任が問われます。

有給は「取れたらラッキー」ではなく、「取らせなければならない」ものに変わりました。

パートと正職員の待遇差は、理由を説明できないといけない

同一労働同一賃金のルールにより、正職員とパートの待遇の差は、きちんとした理由を説明できる差でないといけないことになりました。

基本給だけでなく、賞与や福利厚生も対象です。

「正職員だから賞与が多い」というだけでは説明になりません。パートの保育士から質問された際に、理由を説明できる仕組みを整えることが園に求められています。

基本給や賞与、福利厚生において、正規・非正規雇用間で「不合理な待遇格差」を解消することが法律で義務付けられています。

2. なぜ保育現場の働き方改革は進まないのか

2. なぜ保育現場の働き方改革は進まないのか

法律が変わっても、保育現場ではなかなか改革が進みません。

その背景には、保育の仕事ならではの理由があります。

「効率化する=手抜き」という感覚が根強い

「手書きの連絡帳が愛情の証」「業務を減らすのは子どもへの手抜き」

そんな空気感が、まだ多くの現場に残っています。

アプリや補助員の活用を提案しても、「愛情が足りない」と受け取られることも少なくありません。

しかし、保育士に余裕がなければ、子どもと向き合う質も下がります。「業務を減らす=手抜き」という考え方は、むしろ保育の質を下げる原因になりかねません。

人手が足りなくて、改革を考える余裕がない

保育現場の人手不足は深刻です。厚生労働省の調査では、保育士の離職率は常勤で約9.3%(令和3年度)にのぼります。

人手が足りないと、新しいことを始める時間も気力もなく、「わかってはいるけど手が回らない」という状態が続きます。

大分県が保育現場で行った実態調査でも、改革が進まない一番の理由は「忙しくて手が回らない(49%)」でした。

「前からこうだから」という空気が変化をさまたげる

長年続いてきた慣習のある職場では、「うちはずっとこうだから」「他の園もそうだから」という空気が壁になります。若い保育士が疑問を感じていても、声に出しにくい雰囲気が残っている園も多くあります。

出典 厚生労働省「保育士の働く環境3つの改善」 大分県「保育現場の働き方改革に関するアンケート調査結果(概要版)」


3. 保育士向け|今の職場のセルフチェックリスト

3. 保育士向け|今の職場のセルフチェックリスト

「自分の園の状況が普通なのかどうか」——気になっている保育士も多いと思います。まず、今の職場を客観的に確認してみましょう。

以下の項目で3つ以上当てはまる場合は、働き方改革が十分に進んでいない可能性があります。

4. 保育士の残業・持ち帰りをなくす4つの取り組み

「改革」と聞くと大がかりに感じますが、一つひとつの取り組みはシンプルです。

実際に多くの園で行われている4つの方法を紹介します。

①ICTシステムで書類仕事をデジタル化する

登降園の記録、保護者への連絡、月案・週案の作成——これらをアプリやシステムで管理することで、書類仕事の時間を大きく減らすことができます。

具体的には次のような変化が起きています。

  • 登降園のQRコード・ICカード読み取りで、手書きの出席管理がなくなる
  • 保護者への連絡がアプリで完結し、電話対応や欠席の集計時間がゼロになる
  • 月案・週案のテンプレートで、毎月の書類作成時間が大幅に短くなる

スマートフォンを導入して残業時間がゼロになった保育園の事例もあります。厚生労働省の「ICT化推進事業」では、こうしたシステムの導入費用に補助金が出る仕組みもあります。

出典 厚生労働省「保育士の働く環境3つの改善」

②「保育士がしなくていい仕事」を整理して分ける

清掃・食事の配膳・布団敷きまで、担任がすべてこなしている現場は少なくありません。

こうした仕事を保育補助員や外部スタッフに任せることで、担任保育士は本来の仕事に集中できるようになります。

清掃や配膳を補助員に任せた園では、月平均2時間の残業削減につながった事例があります。食後の片付けや清掃を補助者に任せた結果、担任が子どもと過ごす時間が増え、保育の質も上がったという声も聞かれます。

「保育士でないとできない仕事」と「他の人に任せられる仕事」を整理することが、改革の出発点です。

③持ち帰り仕事を「手当の出る在宅勤務」に切り替える

大分県の実態調査によると、正規職員の持ち帰り仕事は月10〜20時間未満が最も多く、内容は「行事の準備」と「保育計画などの書類作成」が中心でした。

こうした状況を変えている園では、書類作業を手当の出る在宅勤務(テレワーク)として正式に認めています。

「ただの持ち帰り仕事」が「きちんと評価される在宅業務」に変わることで、保育士の気持ちの負担も大きく変わります。

出典 大分県「保育現場の働き方改革に関するアンケート調査結果(概要版)」

④「週休3日制」など、柔軟なシフトを取り入れる

政府が週休3日制を推奨したことを受け、実際に導入を始めた保育園が出てきています。

長野市のある保育園では、1日10時間勤務・週4日出勤で週休3日を実現。早番(7時〜18時)と遅番(8時〜19時)の2パターンを全正社員に適用し、給与は下げない設計(月16日出勤)にしています。

「10時間勤務は不安」という声もありましたが、導入後は「週休2日には戻りたくない」という保育士が続出。シフトがシンプルになって引き継ぎが楽になり、採用や定着にも良い影響が出ています。


5. 保育士が職場を変えるために動ける3つのステップ

5. 保育士が職場を変えるために動ける3つのステップ

「改革は園や上の人がやること」と思いがちですが、一保育士としてできることもあります。まず自分にできることから始めてみましょう。

ステップ1|まず「数字」で現状を記録する

「なんとなく忙しい」「なんとなくしんどい」を、「月○時間の残業」「週○日の持ち帰り」という数字に変えましょう。1週間、手帳やスマホのメモに記録するだけでOKです。

数字にすることで、状況が客観的に見えるようになります。主任や園長に相談するときの根拠にもなります。

ステップ2|「提案」の形で伝える

「しんどいです」より「こうすれば改善できます」という形で伝えると、受け入れてもらいやすくなります。

たとえば「連絡帳のアプリを試してみませんか。無料トライアルがあります」「配膳を補助の方にお願いできると、午後の書類時間が確保できます」のように、具体的な提案を一緒に伝えると動き出しやすくなります。

ステップ3|それでも変わらないなら、職場を選び直す

何度提案しても動かない、相談しても変わらないという状況が続くなら、働き方改革が進んでいる園に転職することも立派な選択肢です。

「今の園を離れることへの罪悪感」を感じる保育士は多いですが、自分の働く環境を選ぶ権利は誰にでもあります。

6. 働き方改革が進んでいる保育園の3つの特徴

6. 働き方改革が進んでいる保育園の3つの特徴

転職・就職を考えている保育士にとって、「どんな園を選べばいいか」は大事な問題です。改革が進んでいる園には、共通する特徴があります。

書類専用の時間(ノンコンタクトタイム)がある

子どもから離れて書類仕事に集中できる時間を「ノンコンタクトタイム」といいます。

「午睡中に全部終わらせて」ではなく、業務時間内に書類専用の時間が確保されている園は、改革に取り組んでいるサインのひとつです。

有給が取りやすい仕組みがある

「言いにくい空気がない」「計画的に取れる仕組みがある」かどうかは、見学や面接で確認できます。

誕生日休暇や記念日休暇など、独自の休暇制度を設けている園もあります。

頑張りが評価される仕組みがある

「がんばっても何も変わらない」という状態をなくすために、役割や給与の基準を整理した「キャリアパスシート」を取り入れている園があります。

評価の基準がはっきりしていると、目標を持って働きやすくなります。


7. 保育士の転職・就職に役立つ求人票チェックポイント

求人票を見るとき、どこに注目すればいいかを整理しました。

「働き方改革が進んでいる園かどうか」を判断するための6つのポイントです。

「残業ほぼなし」「アットホームな職場」など、ふんわりした言葉だけの求人票より、具体的な数字や制度名が書かれている求人票の方が実態を確認しやすいといえます。

見学や面接では「有給はどのくらい取れますか」「ICTシステムは何を使っていますか」と直接聞いてみることも大切です。

8. 保育士の働き方改革に使える補助金・支援制度

8. 保育士の働き方改革に使える補助金・支援制度

働き方改革を進めるためにはコストがかかることもあります。ただ、国や自治体には、その費用を支援する制度が用意されています

。保育士自身も「こういう制度がある」と知っておくことが大切です。

厚生労働省の「保育士の働く環境3つの改善」

厚生労働省は、次の3つを柱とした支援を行っています。

  • 給与改善:処遇改善等加算による給与の引き上げ
  • 環境改善:ICT化推進事業によるシステム導入への補助
  • 就学資金貸付:保育士資格取得を目指す方への貸付制度

ICT化推進事業では、システム導入にかかる費用の一部が補助されます。

自治体独自の補助金制度(大阪市の例)

自治体によって、独自の補助金が用意されている場合があります。大阪市では以下のような支援が行われています。

  • 働き方改革の担当保育士を配置するための費用として年額最大約360万円
  • 完全週休2日の実施促進として年額最大約748万円
  • 保育補助者(清掃担当)の雇い上げとして月10万円を上限とした補助

お住まいの地域の自治体が設けている補助金を調べてみることで、費用の負担を大きく下げられる可能性があります。

出典 厚生労働省「保育士の働く環境3つの改善」 厚生労働省「保育士の確保・資質向上等」 大阪市「大阪市内で保育士として働く方を支援します」

9. 保育士の働き方改革に関するよくある質問

9. 保育士の働き方改革に関するよくある質問

「自分の状況に当てはまるのかどうか」「どうすればいいのか」よく聞かれる4つの疑問に答えます。

Q. 月45時間を超える残業をさせるのは、法律違反になりますか?

原則として違反になります。

働き方改革関連法により、月45時間・年360時間が残業の上限として定められており、超えると園が罰則の対象になります。

ただし、特別な取り決め(特別条項付きの労使協定)がある場合は例外もあります。まず自分の契約書や就業規則を確認してみましょう。

Q. 有給を取りたいと伝えたら断られました。どうすればいいですか?

有給休暇は働く人の権利です。

年5日の取得は義務化されており、正当な理由なく断ることは認められていません。まずは主任や園長に改めて相談し、それでも解決しない場合は、都道府県の労働局や労働基準監督署に相談することができます。

Q. パートと正職員で賞与の差があるのは仕方ないことですか?

「仕方ない」ということはありません。

同一労働同一賃金のルールにより、理由のない待遇の差はつけられません。「なぜ差があるのか」を園側に説明してもらう権利があります。説明を求めることは、正当な行為です。

Q. ICTシステムを導入したいのですが、費用が出ないと言われています。補助金はありますか?

厚生労働省の「ICT化推進事業」として、システム導入費用への補助制度があります。

自治体独自の補助金が使えるケースもあります。まずは自治体の窓口か、厚生労働省の公式サイトで対象の要件を確認してみてください。

出典 厚生労働省「保育士の働く環境3つの改善」

10. まとめ|保育士の働き方改革は「小さな一歩」から始まる

10. まとめ|保育士の働き方改革は「小さな一歩」から始まる

働き方改革は、「法律で決まっているから」だけの話ではありません。

保育士が長く元気に働き続けるために、そして子どもにより良い保育を届けるために欠かせない取り組みです。

書類仕事のデジタル化、補助員との役割分担、在宅勤務の活用、柔軟なシフト設計。どれも一つひとつは小さな変化です。まずセルフチェックリストで今の職場を確認し、できることから動き始めてみてください。

どうしても今の職場では変わらないと感じるなら、働く環境を選び直すことも、自分を守るための大切な選択肢のひとつです。

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