退職金は、長年保育の現場で働いてきた証のひとつです。
しかし「自分の職場に退職金はあるの?」「実際いくらもらえるの?」と、はっきり把握していない保育士は少なくありません。退職金の金額は、公立か私立かによって仕組みも計算方法もまったく異なります。
この記事では、公立・私立それぞれの退職金制度の仕組みと、勤続年数別の目安金額を早見表でわかりやすく紹介します。
- 公立・私立それぞれの退職金の仕組みと金額の違いについて
- 勤続年数別の退職金目安がわかる早見表の見方について
- 退職金をもらうための条件と手続きの流れについて
1. 保育士の退職金は必ずもらえるわけではない

まず知っておきたいのは、退職金の支給は法律で義務づけられていないという点です。会社や施設が「退職金制度を設けるかどうか」を独自に決めてよい、というのが日本のルールです。
そのため、同じ保育士でも働く場所によって、退職金の有無や金額が大きく変わります。
退職金制度の有無は就業規則で確認できます。 すでに働いている保育士は、職場の就業規則や給与規程を確認するか、人事担当者に直接聞いてみるのが確実です。
2. 公立保育園の退職金のしくみと相場
公立保育士の退職金
給与 3〜4ヶ月分
キャリアの節目給与 約10ヶ月分
まとまった金額に平均 2,213万円
地方公務員平均公立保育園で働く保育士は、地方公務員として自治体に採用されています。
退職手当(退職金)は各自治体の条例で定められており、制度として確実に整備されているのが最大の特徴です。
計算のしくみ
公立保育士の退職手当は、次の式で計算されます。
退職手当 = 退職日の給料月額 × 勤続年数・退職理由別の支給率 + 調整額
- 給料月額:退職時点の基本給(各自治体の給料表による)
- 支給率:勤続年数と退職理由(定年・自己都合など)によって異なる
- 調整額:在職中の職責・貢献度に応じて加算される額
自己都合退職の場合の目安
支給率は定年退職より低く設定されており、勤続年数が短いほど少なくなります。
一般的な目安として、勤続10年の自己都合退職で給料月額の約3〜4か月分程度、勤続20年で約10か月分前後とされています(自治体の条例により異なります)。
定年退職(フルキャリア)の場合
地方公務員の定年退職(25年以上勤続)の場合、一般職員の平均支給額は約2,213万円というデータがあります(総務省「令和6年地方公務員給与の実態」)。
ただしこれは全職種の平均であり、保育士単独の数字ではありません。また自治体の規模によっても差があります。
3. 私立保育園の退職金のしくみと相場
私立保育士の退職金
1年以上
1年未満は支給なし12ヶ月以上
被共済期間が必要労働 2/3以上
条件付きで対象に株式会社等は WAM対象外
中退共など園ごとの制度を確認!
私立保育園の退職金は、運営する法人の種類によって仕組みが大きく異なります。自分の職場がどの種類に当たるかを確認することが、退職金を正しく把握する第一歩です。
社会福祉法人が運営する保育園の場合
社会福祉法人が運営する私立保育園のほとんどは、独立行政法人福祉医療機構(WAM)が運営する「社会福祉施設職員等退職手当共済制度」(以下、WAM共済)に加入しています。
WAM共済は、昭和36年に法律で定められた制度で、社会福祉法人の約90%が加入しています。掛金は施設側が全額負担し、職員の自己負担はありません。
退職手当金の計算方法
退職手当金 = 計算基礎額 × 支給乗率
- 計算基礎額:退職前6か月間の平均本俸月額をもとに政令で定める額(20ランク・最低62,000円〜最高360,000円)
- 支給乗率:被共済職員期間(加入年数)と退職理由によって法律で定まる
受給できる条件
- 加入から1年以上経過していること(1年未満は対象外)
- 被共済職員期間が12か月以上あること
- 正規雇用、または所定労働時間が正規職員の3分の2以上のパート職員(雇用期間1年以上)も対象
株式会社・その他が運営する保育園の場合
株式会社などが運営する企業型保育園は、WAM共済への加入対象外です。
退職金制度があるかどうかは施設(会社)ごとに異なり、中小企業退職金共済(中退共)を利用しているケースや、退職金制度自体がないケースもあります。
入職前に求人票や面接で確認することをおすすめします。
4. 保育士退職金早見表|私立保育園(WAM共済)の勤続年数別金額
WAM共済の公式資料をもとに、普通退職(自己都合退職)の場合の退職手当金額を整理しました。
計算基礎額は本俸月額の水準に応じて異なります。ここでは保育士に多い本俸月額の帯として月額130,000円(計算基礎額)と月額175,000円の列を例示します。
普通退職(自己都合退職)の場合
| 勤続年数 | 計算基礎額 130,000円 | 計算基礎額 175,000円 |
|---|---|---|
| 1年 | 約67,860円 | 約91,350円 |
| 3年 | 約203,580円 | 約274,050円 |
| 5年 | 約339,300円 | 約456,750円 |
| 10年 | 約678,600円 | 約913,500円 |
| 11年 ⚡ | 約1,004,328円 | 約1,351,980円 |
| 15年 | 約1,402,440円 | 約1,887,900円 |
| 20年 | 約2,657,850円 | 約3,577,875円 |
| 25年 | 約3,788,850円 | 約5,100,375円 |
| 30年 | 約4,693,650円 | 約6,318,375円 |
※普通退職(業務上の傷病・死亡による退職を除く)の場合の金額です。
※計算基礎額は本俸月額の平均に応じてWAMが定める額で、月額そのものとは異なります。
※⚡マークは乗率が大きく上がるポイントを示しています。
※上記は普通退職(業務上の傷病・死亡による退職を除く)の場合の金額です。
※計算基礎額は本俸月額の平均に応じてWAMが定める額で、月額そのものとは異なります。
注目ポイント:11年目に大きく跳ね上がる
表を見るとわかるように、10年目と11年目の間で支給額が大きく増加します。
これは法律に定められた支給乗率が、11年目から引き上げられる仕組みになっているためです(10年以下:乗率60%、11〜15年:乗率88%)。
長く勤めるほど手厚くなる設計は、人材定着を促すためのものです。
出典: 独立行政法人福祉医療機構「退職手当金額早見表(平成30年度)」
5. 公立・私立の退職金の違いを一覧で比較
公立と私立では、制度の根拠から金額水準まで異なります。以下の表で違いを一目で確認できます。
| 公立保育園 | 私立保育園 (社会福祉法人) |
私立保育園 (株式会社等) |
|
|---|---|---|---|
| 制度の根拠 | 自治体の条例 | 社会福祉施設職員等退職手当共済法 | 会社ごとの就業規則 |
| 制度の有無 | 必ずある | ほぼある (法人の約90%が加入) |
ある場合とない場合がある |
| 掛金負担 | 自治体 | 施設 (職員負担なし) |
会社・施設 |
| 金額の水準 | 比較的高め (条例で保障) |
勤続年数・ 本俸月額による |
施設によって 大きく異なる |
| 確認方法 | 自治体の退職手当条例 | 就業規則・ WAM加入状況 |
就業規則・求人票 |
6. 保育士が退職金をもらうための条件と注意点

退職金を確実に受け取るためには、雇用形態や勤続年数など、いくつかの条件を満たしている必要があります。公立・私立それぞれの条件を確認しておきましょう。
公立保育士の場合
- 各自治体の退職手当条例に定める勤続年数を満たしていること
- 自己都合退職の場合、勤続年数が短いと支給額が大幅に減ることがある
私立保育士(WAM共済)の場合
- 被共済職員期間が1年以上あること(1年未満は支給なし)
- 在籍する施設がWAM共済に加入していること
- 自己の重大な非行による退職は支給制限の対象
パート・非常勤の場合
WAM共済では、正規雇用でなくても以下の条件を満たせば加入対象になります。
- 雇用期間1年以上(または更新で通算1年以上)
- 所定労働時間が正規職員の3分の2以上
該当するかどうかは、施設の担当者に確認してみましょう。
7. 退職金の受け取り時期と手続きの流れ

退職が決まったら、退職金がいつ・どのように振り込まれるかも把握しておきましょう。手続きの遅れが支給の遅れにつながることもあります。
退職後、施設から手続き書類が提出され、機構(WAM)から本人の指定口座に直接振り込まれます。一般的に退職から1〜3か月程度かかるケースが多いとされています。
手続きに必要なものは施設によって異なりますが、口座情報やマイナンバーの提出が必要になることがほとんどです。退職が決まったら早めに担当者に確認しておくと安心です。
なお、退職手当金の請求権には退職日の翌日から5年間の時効があります。退職後も手続きを放置しないよう注意しましょう。
8. 転職・再就職した保育士が知っておきたい「合算制度」

複数の社会福祉法人を渡り歩いてきた保育士にとって、勤続期間の通算はとても気になるポイントです。WAM共済には、前の職場の勤続期間を引き継げる「合算制度」が設けられています。
- 退職手当金を受け取らずに退職した日から3年以内に再び被共済職員となり、機構に申し出た場合、前後の期間を合算して計算できます。
たとえば6年勤めて退職し、その後2年以内に別の社会福祉法人に転職した場合、前の6年間の期間を引き継いで計算できます。転職を繰り返してきた保育士ほど、活用できる可能性のある制度です。
9. まとめ|保育士退職金早見表で自分の金額を確認しよう

保育士の退職金は、公立か私立か、また法人の種類によって制度の仕組みも金額も大きく異なります。
- 公立:地方公務員として条例に基づき支給。制度として確実に整備されている
- 私立(社会福祉法人):WAM共済に加入していればほぼ受け取れる。11年目から大きく増額する
- 私立(株式会社等):制度の有無は施設次第。事前確認が必須
現在の職場に退職金制度があるかどうか、そしていくらになるかは、就業規則を確認するか、人事担当者に直接聞くのが一番確実です。
長く働くほど手厚くなる制度設計になっていることが多いため、将来のライフプランを考える上でも参考にしてみてください。