「保育士は勤務時間が長い」「残業や持ち帰り仕事が多い」というイメージを持っている方は多いのではないでしょうか。実際のところ、平均的な労働時間やシフトの組み方、残業の実態はどうなっているのでしょうか。
この記事では、保育士の勤務時間を公的なデータをもとにわかりやすく解説します。早番・中番・遅番の1日の流れや、休憩・残業の実態、勤務時間で失敗しない職場の選び方まで整理しました。
就職・転職を考えている方も、今の働き方を見直したい方も、ぜひ参考にしてください。
- 保育士の勤務時間の基本ルールと、シフト(早番・中番・遅番)ごとの働き方について
- 休憩・残業の実態と、残業が増えやすい理由や時期について
- 公立・私立や施設形態による違いと、勤務時間で失敗しない職場の選び方について
1. 保育士の勤務時間の基本|労働基準法で定められたルール

保育士の勤務時間を理解するために、まずは労働時間の土台となる法律のルールを押さえておきましょう。
1日8時間・週40時間が原則
労働基準法では、働く時間の上限が「1日の労働時間は8時間まで」「1週間の労働時間は40時間まで」と定められています。
これは保育士に限らず、すべての労働者に共通するルールです。多くの保育園も、この1日8時間・週40時間を基本にシフトを組んでいます。
休憩時間のルール
労働時間が長くなる場合は、雇用主が休憩を与えることが法律で義務づけられています。

保育士は1日8時間勤務が一般的なため、多くの園で1時間の休憩が設定されています。
「拘束時間」と「労働時間」は違う
求人票を見るときに混同しやすいのが、「拘束時間」と「労働時間」の違いです。労働時間が8時間でも、そこに休憩1時間が加わると、園にいる時間(拘束時間)は9時間になります。
「7:00〜16:00」という表記は、休憩1時間を含んだ拘束時間を示しているケースが多いと覚えておきましょう。
2. 保育士の平均勤務時間はどのくらい?公的データで見る実態

「保育士の勤務時間は長い」とよく言われますが、統計上の数値はどうなっているのでしょうか。
統計で見る保育士の実労働時間
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査によると、保育士(一般労働者)の1か月の実労働時間はおおむね160〜170時間程度で、これに月数時間程度の残業(超過実労働時間)が加わる水準です。
1日8時間で計算すると月20日前後の勤務にあたり、数字だけを見れば労働者として一般的な範囲といえます。
「平均」だけでなく「分布」で見ることが大切
ただし、この数値はあくまで残業として処理・申告された時間です。実際の現場では、タイムカードを押したあとの事務作業や持ち帰り仕事など、統計に反映されにくい労働も存在します。
全国保育協議会の会員の実態調査2021報告書では、週あたりの実働時間が40〜50時間未満の正規職員が約6割を占めています。
平均値では一般的な水準に見えても、分布で見ると、正規職員の約6割が法定の週40時間の近くから超えて働く層に集中しているのです。
数字の見え方と現場の実感にはギャップがあるため、平均値だけで判断せず、園ごとの実態を確認することが大切です。
参考:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況」 全国保育協議会「会員の実態調査2021報告書」
3. 保育士のシフト制|早番・中番・遅番の勤務時間帯
保育園の多くは、朝7時頃から夜19時頃まで開園しています。この長い開園時間をカバーするために、保育士は交代制勤務(シフト制)で働くのが一般的です。
早番・中番・遅番の基本パターン
代表的な3つのシフトの時間帯は以下のとおりです(実働8時間・園によって多少異なります)。

登園が集中する8〜9時頃は中番の職員を多めに配置するなど、時間帯ごとの子どもの人数に合わせて人員を調整している園が多くあります。
シフト制と固定時間制の違い
すべての園がシフト制というわけではありません。勤務時間が毎日同じ「固定時間制」を採用している園もあります。
- シフト制:生活リズムは日によって変わるが、早く帰れる日もある
- 固定時間制:毎日同じ時間で予定を立てやすいが、早番・遅番の融通は利きにくい
どちらが合うかは人それぞれです。求人票で勤務形態を確認しておきましょう。
4. 保育士のシフト別・1日の勤務スケジュール例

シフトによって1日の動き方は大きく変わります。ここでは早番・中番・遅番それぞれの1日の流れをイメージしてみましょう。
早番(7:00〜16:00)の1日
朝一番に出勤し、園を開けるところから始まります。
- 7:00 解錠・換気・室内の清掃・受け入れ準備
- 7:30 早朝保育の子どもの受け入れ、保護者から健康状態を確認
- 9:00 各クラスの活動サポート
- 12:00 給食・午睡の対応
- 13:00 休憩
- 14:00 午睡明けの対応・書類作成
- 16:00 中番・遅番へ引き継いで退勤
担任が早番とは限らないため、保護者から聞いた子どもの様子を担任へ正確に伝えることも大切な役割です。
中番(8:00〜17:00)の1日
登園がもっとも多い時間帯に合わせて出勤し、日中の保育の中心を担います。
- 8:00 登園の受け入れ・視診
- 9:30 主活動(制作・散歩・行事の練習など)
- 12:00 給食・午睡
- 13:00 休憩・連絡帳の記入
- 15:00 おやつ・降園準備
- 17:00 遅番へ引き継いで退勤
遅番(10:00〜19:00)の1日
午前中に出勤し、延長保育や最後のお迎えまでを担当します。
- 10:00 出勤・日中の保育サポート
- 12:00 給食・午睡
- 15:00 休憩
- 16:00 順次降園の対応
- 18:00 延長保育(少人数の異年齢保育になることが多い)
- 19:00 最後のお迎え対応・戸締まり・施錠
お迎えの際に、担任から引き継いだ連絡事項を保護者へ伝えるのも遅番の重要な仕事です。
5. 保育士の休憩時間の実態|「午睡中も休めない」という声
法律では1時間の休憩が定められていますが、「思うように休めない」という声は現場でよく聞かれます。
保育士の休憩は、子どもたちが昼寝をする午睡(ごすい)の時間に取るケースが多いのが実情です。
ところがこの時間帯は、連絡帳の記入や行事の準備、子どもの呼吸チェック(睡眠中の事故防止)などが重なりやすく、実質的に休憩になっていないこともあります。
近年は、こうした状況を改善するために次のような取り組みを進める園も増えています。
- 保育から離れて事務作業に集中できるノンコンタクトタイムの確保
- ICTシステム(タブレットでの記録・デジタル連絡帳)による書類業務の削減
- 休憩用のスペースを設けて交代でしっかり休める体制づくり
休憩がきちんと取れるかどうかは働きやすさに直結します。見学や面接の際に、休憩の取り方を具体的に聞いてみるとよいでしょう。
6. 保育士の残業時間の実態|残業が多くなる3つの理由

統計上の残業は月3時間前後とされていますが、実際には残業や持ち帰り仕事に悩む保育士が少なくありません。ここでは残業が発生しやすい主な理由を整理します。
理由① 人手不足
保育現場では慢性的な人手不足が続いています。ひとり分の業務量が増えると、勤務時間内に仕事が終わらず残業につながりやすくなります。
急な欠員が出たときに、シフトの穴を埋めるかたちで負担が偏ることもあります。
理由② 書類・事務作業の多さ
保育士の仕事は子どもと関わるだけではありません。指導計画、連絡帳、保育日誌、児童票など、作成する書類が数多くあります。
保育中は手が離せないため、これらの事務作業が勤務時間後に回りやすいのが実情です。
理由③ 行事の準備
運動会・発表会・季節のイベントなど、保育園には行事が多くあります。準備が本格化する時期は、制作物の作成や打ち合わせで一時的に残業が増える傾向があります。
残業代・持ち帰り仕事について知っておきたいこと
残業代は割増賃金で支払われる
労働基準法では、1日8時間・週40時間を超えて働いた分には、通常の賃金に1.25倍以上の割増賃金(残業代)を支払うことが定められています。
持ち帰り仕事も労働時間にあたることがある
自宅への持ち帰り仕事も、業務として指示されたものであれば労働時間にあたる可能性があります。
「残業代が出ない」「持ち帰りが当たり前になっている」という状況が続く場合は、園に相談したり、労働時間の記録を残しておくことが自分を守る一歩になります。
個別の判断については、必要に応じて労働基準監督署などの専門機関へ確認してください。
7. 保育士の残業が増えやすい時期|年間の忙しさの波
保育士の残業は一年を通して均等ではなく、行事や年度の切り替わりによって波があります。
忙しい時期をあらかじめ知っておくと、心の準備や休みの取り方の計画が立てやすくなります。

特に年度末(2〜3月)と年度始め(4月)、行事が集中する秋から冬にかけては残業が増えやすい時期です。求人を検討するときは、行事の規模や準備の体制もあわせて確認しておくと安心です。
8. 公立と私立で保育士の勤務時間はどう違う?
同じ保育士でも、公立園と私立園では勤務時間や労働環境の傾向が異なります。

公立園の勤務時間の特徴
公立園の保育士は地方公務員にあたり、勤務時間や残業の管理が比較的しっかりしている傾向があります。ただし、採用には自治体の公務員試験に合格する必要があります。
私立園の勤務時間の特徴
私立園は運営法人によって働き方が大きく異なります。延長保育や行事に力を入れている園では残業が発生しやすいこともあれば、ICT化を進めて定時退勤を徹底している園もあります。
「私立だから大変」と一括りにせず、園ごとに見極めることが大切です。
9. 施設形態で変わる保育士の勤務時間|認定こども園・企業主導型・学童など
保育士が働く場所は認可保育園だけではありません。施設の種類によって開所時間や勤務スタイルが変わり、勤務時間にも違いが出ます。

同じ保育士資格でも、施設形態によって働く時間帯や残業のしやすさは大きく変わります。ライフスタイルに合わせて施設のタイプから選ぶのも一つの方法です。
10. 育児と両立しやすい保育士の働き方|時短・パート・朝夕のみ勤務
早番・中番・遅番のフルタイム勤務が難しい場合でも、保育士として働き続ける方法はいくつもあります。ライフスタイルに合わせた働き方を知っておきましょう。

時短勤務は法律で認められた制度
遅番19時までのフルシフトは、育児期には負担が大きい働き方です。しかし、3歳未満の子どもを養育している場合は、希望すれば1日の労働時間を原則6時間に短縮できます。
これは育児・介護休業法(短時間勤務制度)で事業主に義務づけられた働き方で、フルタイムが難しい時期でも保育士を続けやすくする仕組みです。
朝夕のみのスプリット勤務と組み合わせれば、シフトの負担を抑えながら現場に戻る選択肢も広がります。
雇用形態を変えることで残業や勤務時間の負担を抑えられる場合もあります。今の働き方がつらいと感じたときは、無理をせず選択肢を広げて考えてみましょう。
11. 勤務時間で失敗しない保育園の選び方
同じ保育士の求人でも、勤務時間や残業の実態は園によって大きく異なります。就職・転職で後悔しないために、確認しておきたいポイントを整理します。
求人票でチェックしたいポイント
- 勤務時間・休憩時間の記載……拘束時間と実働時間、休憩の長さを確認する
- 残業時間の実績……「月平均◯時間」など具体的な数字があるか
- 年間休日数……120日以上が休みの取りやすい一つの目安
- ICTシステムの導入……書類業務の負担軽減につながる
- シフトの決め方……特定の職員に早番・遅番が偏っていないか
見学・面接で聞いておきたいこと
求人票だけではわからない部分は、見学や面接で直接確認するのが確実です。
- 「残業はどのくらい発生していますか?」
- 「休憩はどのように取っていますか?」
- 「持ち帰り仕事はありますか?」
こうした質問に具体的に答えてくれる園は、労働時間の管理に前向きな傾向があります。自分に合った職場かどうかを見極める材料にしましょう。
よくある質問
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保育士は始業の何分前に出勤するのが一般的ですか?
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園によって異なりますが、着替えや準備の時間を見込んで5〜10分前を目安に出勤するケースが多いようです。
特に早番は解錠や換気、清掃などの開園準備があるため、余裕をもった出勤が求められる場合があります。具体的な時間は求人票や面接で確認しておくと安心です。
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保育士に夜勤はありますか?
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一般的な認可保育園に夜勤はほとんどありません。ただし、夜間保育や病児保育を行う施設では、夜間帯の勤務が発生することがあります。
夜勤の有無は施設形態によって変わるため、応募前に確認しておきましょう。
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土曜日は必ず出勤になりますか?
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多くの保育園は土曜日も開園しているため、職員が交代で出勤するのが一般的です。
土曜に出勤した場合は、平日に振替休日を取るケースが多く見られます。土曜の勤務体制は園によって異なるため、シフトの組み方を確認しておくとよいでしょう。
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保育園で導入されている「変形労働時間制」とは何ですか?
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一定の期間内で労働時間を平均して調整する制度です。
行事の多い時期や年度替わりなどに1日9時間働く日があっても、別の日の労働時間を短くして期間全体で調整します。導入の有無や運用は園によって異なるため、気になる場合は面接で確認しておくと安心です。
まとめ:保育士の勤務時間を知って後悔しない職場選びを

保育士の実労働時間は月おおむね160〜170時間程度で、数字だけを見れば一般的な労働者と大きく変わりません。ただし、統計に表れにくい持ち帰り仕事やサービス残業もあり、実態は園によって大きく異なります。
多くの園では早番・中番・遅番のシフト制が採用されており、開園から閉園までを交代で担っています。
休憩や残業、公立・私立の違い、時短やパートといった多様な働き方を知っておくと、自分に合った勤務時間の職場を選びやすくなります。
求人票では勤務時間・残業実績・年間休日・ICT導入などを確認し、見学や面接で具体的に質問することが重要です。
今の働き方に無理を感じているなら、雇用形態の見直しや転職も、自分を大切にするための前向きな選択肢になります。