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不適切保育とは?虐待との違いと事例・原因・保育士がとるべき対応

「今の声かけは不適切保育にあたるのでは」と不安になったことはないでしょうか。

2025年には国のガイドラインが改訂され、不適切保育という言葉の位置づけそのものが見直されました。

ここでは公的資料をもとに、虐待との違い、起こる原因、そして現場でとれる対応を整理します。

この記事を読んでわかること
  • 不適切保育と虐待の違い、および国が示す判断の指標について
  • 不適切保育が起こる構造的な原因と、個人・園それぞれの防止策について
  • 2025年10月に義務化された通報の手順と、通報した人を守る仕組みについて
目次

1. 不適切保育とは?国のガイドラインにおける位置づけ

1. 不適切保育とは?国のガイドラインにおける位置づけ

不適切保育とは、子どもの心身に有害な影響を与えるおそれのある関わりを広く指す言葉です。

法律上の定義はなく、行政文書や報道のなかで使われてきた経緯があります。

もともとは「改善を要する関わり」を指す言葉だった

国の調査研究事業として2021年3月にまとめられた「不適切な保育の未然防止及び発生時の対応についての手引き」は、不適切な保育を「保育所での保育士等による子どもへの関わりについて、保育所保育指針に示す子どもの人権・人格の尊重の観点に照らし、改善を要すると判断される行為」と定義しました。

そのうえで、具体的な行為を5つの類型に整理しています。この区分は、全国保育士会のセルフチェックリストとも対応しています。

(出典:「不適切な保育の未然防止及び発生時の対応についての手引き」令和3年3月/東京都町田市サイト掲載版

手引きが示す5つの類型

  • 子ども一人ひとりの人格を尊重しない関わり
  • 物事を強要するような関わり・脅迫的な言葉がけ
  • 罰を与える・乱暴な関わり
  • 子ども一人一人の育ちや家庭環境に対する配慮に欠ける関わり
  • 差別的な関わり

2025年の改訂で「不適切な保育」という概念は使われなくなった

こども家庭庁と文部科学省は2025年8月、従来のガイドラインを改訂し、名称を「保育所や幼稚園等における虐待の防止及び発生時の対応等に関するガイドライン」に変更しました。

改訂後は「不適切な保育」という概念を用いず、「虐待」を軸に対応を再整理しています。さらに2026年4月には、国への報告手順や公表様式に関する一部改訂が行われました。

あわせて、対象となる施設・事業も大きく広がりました。保育所や認定こども園に加え、幼稚園、特別支援学校幼稚部、一時預かり事業、病児保育事業、乳児等通園支援事業などが対象に含まれています。

就学前の子どもを預かる場全体のテーマとして整理された点は、大きな変化です。

(出典:こども家庭庁「保育所等における虐待防止及び発生時の対応等について」

「日々の行為の延長線上に虐待がある」という考え方

用語が消えたからといって、虐待に至らない関わりを見過ごしてよいわけではありません。

ガイドラインは、一つひとつの行為が虐待に該当しなくても、振り返りによる改善がなければ繰り返しによって虐待になり得ると説明しています。日々の行為の延長線上に虐待があるという整理です。

大切なのは「不適切保育かどうか」を線引きすることではなく、振り返って改善する流れを園のなかにつくることです。

なお、ガイドラインは、自治体が運用のなかで従来の「不適切な保育」という言葉を使い続けることも差し支えないとしています。

2. 不適切保育と虐待の違い|4つの類型と判断の指標

虐待にあたるかどうかは、感覚ではなく国が示した枠組みに沿って判断されます。ここを理解しておくと、自分の関わりを客観的に見つめ直しやすくなります。

児童福祉法が定める虐待の4類型

2025年10月に施行された改正児童福祉法では、保育所等の職員による虐待を次の4つに定義しています。

出典:こども家庭庁・文部科学省「保育所や幼稚園等における虐待の防止及び発生時の対応等に関するガイドライン」

虐待かどうかを判断する4つのプロセス

ガイドラインでは、まず行われた行為そのものを検討し、それだけで判断できない場合に、ほかの要素を加える手順が示されています。

  1. 行われた行為のみをもって虐待に該当すると判断できるか
  2. 行為の強度や頻度から虐待に該当すると判断できるか
  3. 行為以外の要素(保育士の意図、子どもの状況や影響)を勘案して判断できるか
  4. 行為を行った職員への対応や施設への処分等を検討する

判断の指標は、ア:行為の強度・頻度、イ:保育士等の意図、ウ:子どもの状況・影響の3つです。

ただし「殴る」「蹴る」「叩く」「逆さ吊りにする」「ご飯を押し込む」といった行為は、指標を検討するまでもなく虐待と判断されます。

なお、職員が置かれていた職場環境は、虐待に該当するかどうかの判断そのものには影響しません。該当の可否が定まったあと、処分等を検討する段階で考慮される要素と整理されています。

ガイドラインが示す判断例(給食の場面)

苦手なものを食べたがらない3歳児に、克服させる意図で繰り返し促し、席を立とうとしたため連れ戻して大声で注意し、口元にスプーンを当てて食べさせる。

同じ関わりを毎日のように続けた結果、保護者から「給食の時間が嫌で登園したがらない」と相談があった。

この事例は虐待に該当すると整理されています。

大声での注意やスプーンを当てる行為は、単体では直ちに虐待とはいえません。毎日繰り返された点、ほかの方法を検討しなかった点、登園を嫌がる影響が出た点が重なって判断されています。

単発の行為より、繰り返しと子どもへの影響が重く見られると理解しておきましょう。

「叩く」をめぐる補足

ガイドラインは「叩く」を身体的虐待に該当する行為とし、いかなる場合も認められないとしています。

ここでいう「叩く」には、痛みを与えて行動をコントロールする目的で身体を打つことも含まれます。

一方で、コミュニケーションの一環として頭にポンポンと手をのせる行為は、虐待に該当しない可能性が高いとも補足されています。

通報等があった際には、その行為が「叩く」と評価されるべきものだったのかを丁寧に整理することが求められます。

3. 不適切保育はどれくらい起きている?公的データで見る実態

3. 不適切保育はどれくらい起きている?公的データで見る実態

不適切保育は一部の園だけで起きているのでしょうか。国が全市区町村を対象に行った調査から、件数と内訳を確認します。

国の実態調査では保育所で914件を確認

令和4年4月から12月までを対象とした初の全国実態調査では、市町村が把握した件数として、保育所で不適切な保育が914件確認されました。うち90件が虐待と判断されています。

内訳は心理的虐待42件、身体的虐待36件、性的虐待20件、ネグレクト4件です。1件が複数の類型にまたがる場合があるため、合計は一致しません。

認可外保育施設や認定こども園などを含めた保育施設全体では、市町村把握分で不適切な保育が1,316件、虐待が122件でした。

都道府県が把握した分を加えると、不適切な保育1,361件、虐待132件となります。

(出典:こども家庭庁「保育所等における虐待等の不適切な保育への対応等に関する実態調査」

類型の内訳から見えること

件数以上に示唆があるのは、類型ごとの内訳です。

保育所の914件を分類すると「子ども一人一人の人格を尊重しない関わり」が384件で最多、次いで「物事を強要するような関わり・脅迫的な言葉がけ」が337件と続きます。

一方、実際に虐待と判断された90件では心理的虐待が42件で最も多く、身体的虐待の36件を上回りました。

同じ調査の2つの表を重ねると、言葉によるかかわりが虐待認定に最も直結しやすいという構図が読み取れます。手を出す行為だけを警戒していると、判断の中心にある領域を見落とすことになります。

今後は都道府県が毎年度の状況を公表する

改正児童福祉法により、都道府県知事は毎年度、管内の虐待の状況をとりまとめてウェブサイトで公表することになりました。

最初の公表対象は、法が施行された2025年10月1日から2026年3月31日までの期間です。

さらに国も、2026年度から共通の調査票を用いて全国の状況を毎年度把握する方針を示しています。

自治体ごとにばらつきのあった把握状況が、継続的な統計として見えるようになります。

(出典:こども家庭庁「保育所等における虐待防止及び発生時の対応等について」

4. 不適切保育につながりやすい場面

4. 不適切保育につながりやすい場面

報道される事案は特別な出来事に見えますが、その多くは日常の延長線上にあります。特に切り替えを急ぎやすい次の4場面は、繰り返しになっていないかを意識しておきたいところです。

  • 食事・完食指導
    口に食べ物を運び続ける、食べ終わるまで席を立たせない。「強要」に転じやすい代表的な場面です
  • 排泄・おむつ交換:
    失敗を大きな声で指摘する、ほかの子どもの前で「赤ちゃんみたい」と言う。羞恥心を伴うため子どもの心に残ります
  • 午睡:
    眠れない子どもを押さえつける、布団から出ないよう強く制止する。身体的な拘束に近づくことがあります
  • 言葉がけ:
    「置いていくよ」といった脅しや、「〇〇ちゃんはできるのに」という比較。即効性がある分だけ習慣化しやすい表現です

全国保育士会のセルフチェックリストも、登園時・日中・昼食時・午睡時・降園時・その他の6場面に沿って項目が並んでいます。

生活の切り替えが起きる時間帯に注意点が集中している点は共通しています。

5. 不適切保育が起こる原因|個人ではなく職場の構造にある

5. 不適切保育が起こる原因|個人ではなく職場の構造にある

不適切な関わりは、保育士個人の資質だけで説明できるものではありません。むしろ構造的な要因が重なることで起こりやすくなります。

時間に追われる保育スケジュール

着替え、食事、午睡、片づけと、区切らなければならない場面が一日中連続します。

「次の活動までに終わらせなければ」という焦りが待つ余裕を奪い、強い言葉や手を出す関わりを生みます。

職員配置と人手不足

配置基準は2024年度から見直され、4・5歳児は30対1から25対1へ、3歳児は20対1から15対1へ改善されました。

ただし当分の間は従前の基準での運営も認める経過措置があり、現場の体感がすぐに変わるわけではありません。

注意したいポイント

注意したいのは、この経過措置が園単位ではなく自治体単位で適用される点です。

都道府県や市町村が「改善後の基準では教育・保育の提供に支障が出る」と認めれば、その自治体内では一律に従前の基準が効力を持ちます。

同じ年度でも、勤務先の自治体によって前提となる配置が異なることがあります。

(出典:こども家庭庁・文部科学省「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準等の一部改正について」

閉鎖的な職場環境と同調圧力

クラスが密室化し、ほかの職員の目が届かない状態が続くと、園独自の慣習が疑問視されないまま定着します。

違和感を覚えても指摘しづらい空気があると、問題は表面化しません。

記録や書類による業務過多

連絡帳、指導計画、行事準備といった間接業務が積み重なると、子どもと向き合う時間が削られます。気持ちの余裕のなさは、そのまま関わり方に現れます。

6. 不適切保育を防ぐために保育士個人ができること

6. 不適切保育を防ぐために保育士個人ができること

構造的な要因が大きいとはいえ、日々の実践のなかでできることもあります。負担にならず続けられる3つの習慣を紹介します。

セルフチェックリストで定期的に振り返る

全国保育士会の「人権擁護のためのセルフチェックリスト」は、具体的な行動レベルで自分の関わりを確認できる資料です。

5つのカテゴリーに全29項目が並び、それぞれに「より良いかかわりへのポイント」が添えられています。

項目数が最も多いのは「子ども一人ひとりの人格を尊重しないかかわり」の10項目です。年に一度ではなく、学期の区切りなど短い間隔で使うと変化に気づきやすくなります。

(出典:全国保育士会「保育所・認定こども園等における人権擁護のためのセルフチェックリスト」

言い換えの引き出しを増やす

否定や脅しを避けようとするだけでは、とっさの場面で言葉が出てきません。肯定的な表現をあらかじめ用意しておくと切り替えやすくなります。

振り返りを短い「型」にして続ける

振り返りは、続けられる形にしておくことが大切です。気になった場面を1日1件、次の4項目だけ残す方法なら5分程度で書けます。

評価ではなく事実を書くのがコツです。「よくなかった」ではなく「何を言ったか」を残すと、読み返したときに繰り返しの傾向に気づけます。

気になった場面を言葉にして共有する

判断に迷う関わりは、その日のうちに主任やクラス担任に共有しておくと、記憶が新しいうちに事実を整理できます。

一人で抱え込まないことが早い改善につながります。

7. 不適切保育を防ぐために園が整えるべき体制

個人の心がけだけに任せると、余裕のない職員ほど追い込まれてしまいます。園として整えたい仕組みは次の3点です。

振り返りを仕組みとして組み込む

ガイドラインは、職員個人と施設単位の双方で日々の保育実践を振り返ることを求めています。

努力に任せるのではなく、週会議に振り返りの時間を組み込むなど、仕組みとして確保することが有効です。

こうした機会の確保は、施設長・園長など管理責任者の役割とされています。

ノンコンタクトタイムと業務削減

ノンコンタクトタイムとは、子どもの保育から離れて記録や計画の作成にあたる時間のことです。

この時間を確保すると、保育中の焦りが減ります。登降園管理や連絡帳のデジタル化など、間接業務そのものを減らす取り組みも効果があります。

相談しやすい関係と外部の目

複数担任での保育、クラスを越えた職員の行き来、第三者評価の受審など、閉鎖性を下げる工夫が抑止力になります。

第三者評価は、公正・中立な立場の専門機関が施設の運営やサービスの質を評価し、結果を公表する仕組みです。気になる場面を口に出しても責められない関係づくりが土台になります。

なお、自治体側にも支援の枠組みがあります。こども家庭庁の保育所等虐待防止対策事業では、専門人材の活用、虐待対応実務者会議の設置、自治体職員の対応力強化研修、保育士等への研修などが補助対象とされています。

自園だけで抱えず、自治体の担当課に相談する選択肢も持っておくとよいでしょう。

8. 不適切保育や虐待を見つけたときの通報義務と伝え方

8. 不適切保育や虐待を見つけたときの通報義務と伝え方

ほかの職員の関わりが気になったとき、どう動けばよいのでしょうか。

法改正で通報が義務となった今、手順を知っておくことが自分と子どもの双方を守ります。

通報が法律上の義務になった

2025年10月1日に施行された改正児童福祉法により、保育所等の職員による虐待を受けたと思われる子どもを発見した人には、都道府県や市区町村への通報が義務づけられました

対象は保育所や認定こども園のほか、幼稚園、特別支援学校幼稚部、小規模保育事業、認可外保育施設、一時預かり事業、病児保育事業、乳児等通園支援事業など広範囲に及びます。

通報先が法律で定められた意味は、数字を見ると分かりやすくなります。

2020年12月時点で相談窓口を設けていた自治体は都道府県で15.6%、市区町村で23.8%にとどまり、2022年度でも保育所に関する窓口を設置していたのは42.6%でした。

どこに相談すればよいか自体が地域によって異なっていた状態を、法改正が制度的に整理したことになります。

(出典:こども家庭庁「保育所等における虐待防止及び発生時の対応等について」

気になったとき、誰にどの順で伝えるか

義務化により「いきなり自治体に連絡すべきか」と迷う場面が増えています。基本は園内から段階を踏み、深刻さに応じて段階を飛ばすと整理しておくと動きやすくなります。

  1. その場で事実をメモに残す(日時、場面、実際の言動、子どもの様子を評価を交えずに)
  2. クラス内や主任に相談し、園として振り返る機会をつくる
  3. 改善されない、繰り返されている場合は園長・法人へ伝える
  4. それでも対応されない場合は市区町村・都道府県の窓口へ相談または通報する

緊急性が高い場合は段階を飛ばす

叩く、押さえつける、食べ物を押し込むなど、子どもの安全が直ちに脅かされる行為を目にした場合は、園内の手順にかかわらず速やかに自治体へ通報します。

虐待を受けたと「思われる」段階で対象となるため、確証を待つ必要はありません

通報した人は不利益な取扱いを受けない

改正児童福祉法には、通報を理由として解雇その他の不利益な取扱いを受けないという規定が置かれています。

あわせて、自治体に通報することは守秘義務違反にあたらないことも法律上明記されました。疑問を感じても職場での立場が心配で動けない、という状況を想定した仕組みです。

ただしこの保護は、虚偽の通報や、一般的に見て虐待があったと考えることに合理性がない通報には及ばないとされています。

見たままの事実を落ち着いて伝えることが、結果として自分を守ることにもつながります。

通報後に自治体が行うこと

通報を受けた自治体は、事実確認と子どもの安全確保を行い、必要に応じて施設への指導や改善勧告などの措置を講じます。講じた措置は児童福祉審議会等へ報告されます。

ガイドラインは、この仕組みが職員を罰することを目的としたものではなく、保育の改善を目的とするものだと明記しています。

通報は、事実を確認して改善につなげるための入口として設計されています。

9. 不適切保育を指摘されたとき、保育士本人はどうなるのか

「通報する側」だけでなく、自分の関わりが問題視されたときにどうなるのかを知っておくことも、落ち着いて対応するために役立ちます。

自治体による事実確認の流れ

通報を受けた自治体は、情報を整理したうえで園への電話や訪問による確認を行い、必要に応じて立入調査を実施します。

聞き取りのほか、日誌の閲覧や録音・カメラ映像の確認が行われることもあります。

その後、虐待に該当するかの判断と園への指導方針が決められます。判断には行為の強度・頻度や意図、子どもへの影響が用いられるため、聞き取りでは事実を時系列で正確に伝えることが大切です。

自宅待機を命じられた場合の扱い

調査期間中に、園から自宅待機を指示されることがあります。休業手当が支払われるかどうかは、待機を命じた理由や就業規則の定めによって判断が分かれるため、一律には決まりません。

指示は口頭ではなく書面で受け取り、期間と給与の取扱いを確認しておくと行き違いを防げます。

判断に迷う場合は、労働基準監督署や労働組合、専門家への相談が選択肢になります(一般的な情報であり、個別の判断は専門家にご確認ください)。

保育士資格への影響

保育士登録は、児童福祉法に基づき、都道府県知事が信用失墜行為や一定の刑事罰を理由に取り消すことができます。

園内での指導や自治体からの改善指導が、ただちに資格の喪失につながるわけではありません。事実関係の確認に誠実に応じることが、まず取るべき対応になります。

記録が自分を守る材料になる

日々の保育記録や振り返りのメモは、指摘を受けた際に「どのような意図で、どの程度の頻度で行っていたか」を説明する材料になります。

6章で紹介した短い振り返りは、防止策であると同時に、自分の実践を説明できる記録としても働きます。

よくある質問

園の中で話し合って改善された場合でも、自治体への通報は必要ですか

必要です。こども家庭庁が公表するQ&Aでは、職員が虐待を発見して施設長に相談し、園内の話し合いで状況が改善して事態が解決した場合であっても、児童福祉法の規定により発見した人は速やかに自治体へ通報する義務を負うと示されています。

園内での解決と自治体への通報は、どちらか一方を選ぶものではありません。

匿名で通報することはできますか

できます。ガイドラインは、通報者が匿名を希望する場合も、匿名でよいことを伝えて安心感を与えたうえで丁寧に内容を聞き取るよう自治体に求めています。

また児童福祉法には、通報の事務にあたる自治体職員が、通報した人を特定させる事項を漏らしてはならないという規定も置かれています。

具体的な受付方法は自治体によって異なるため、窓口で確認してください。

保護者やパート職員も通報義務の対象になりますか

対象になります。法律上は保護者であるか職員であるかにかかわらず、虐待と疑われる事案を発見した人が速やかに自治体へ通報することとされています。

雇用形態や資格の有無による区別もありません。「自分は立場が弱いから」と迷う必要はない設計になっています。

2025年10月より前の出来事も通報の対象になりますか

対象になり得ます。

こども家庭庁のQ&Aでは、法施行日より前に生じた事案であっても、施行後に通報を受け付けた場合、自治体は事実確認などの必要な措置を講じる義務があるとされています。

通報の時点で対象の子どもがすでに退所・転所している場合も同様です。

まとめ|不適切保育は仕組みで防ぐもの

不適切保育をめぐる国の整理は、2025年の改訂で「虐待」を軸としたものへ大きく変わりました。

判断基準が明確になった一方、日々の行為の延長線上に虐待があるという考え方が示され、振り返りと改善の重要性はこれまで以上に高まっています。

焦りや余裕のなさは、個人の努力だけで解消できるものではありません。セルフチェックによる振り返りと園としての体制づくりを同時に進めることが、子どもにとっても保育士にとっても安心できる環境につながります。

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